森見登美彦『有頂天家族』幻冬舎、2007年

有頂天家族

作者のブログを見ていると、「毛深い子」とかそんな名前で呼ばれていた作品。狸のお話。それにしてもこの既視感はなんだろう、と考えてしまう内容です。痛快でテンポ良く話が進み、面白い、という点では突き抜けているのですが、どこか引っ掛かるところが・・・「平成何とかポンポコ」ではありません。そうか、井上ひさしの狸の小説があったか、と。いや、しかし、それでも少し違う。

京都という街の中で、なぜか狐が出てくることなく、人間・天狗・狸という構図で物語られていくのは結構、特徴的なものかもしれません。これが舞台が京都である所以によるものかもしれず、単に作者の生活空間から立脚しているのかもしれませんが。狸と狐という分かりやすい構図を取っ払って、3つの種族構図を敷衍しつつ、重層性をも持たせた、というのもなるほどと頷く部分でしょうか。