森博嗣『カクレカラクリ』メディアファクトリー、2006年

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep

何だか、コカコーラばかり飲んでいる作品だなあ、と思いながら、読んでいると自分自身も飲みたくなってくる。自分からコーラを買う、という行為は高校生以来、それほど積極的にやってはいない。大学生になって買ったのも、ペットボトルについてくるFF9のフィギュア目当てであって、コーラはどうでも良かった。さらに言えば、コーラである必要もなかった。でも、全部飲みました。

話が脱線します。カクレカラクリモリヒロシ、という表紙のデザインが結構、お気に入りです。もう少しポップであっても、良かったのではないか、とも思いますが。さておき、話は村社会における隠れカラクリ(漢字変換されない)を探すというミステリィ

謎自体は暗号となっていて、終わってみれば、その程度の謎が120年間解かれることがなかったというのには頭を悩ませてしまいますが、個人的には暗号苦手なので、それはそれで良いものかもしれません。一応、村の人たちは積極的に解読しようという姿勢を見せてはない、ということになってはいますから(ただし、それは現代の話ですが)。ポアロのポーカーのときも何言っているのか分かりませんでしたし、二階堂蘭子も同様な感じでしたが。でも今回のは少しやさしめ。

となってくると全体としては、やはりコカコーラではないでしょうか。廃墟マニア、オールドな玩具マニア等々、様々な人間の局面を、このような閉鎖的な空間に惜しみもなく出してくるというのは、ただそれは作者の趣味を押し出してきただけとも言えますが、ある意味で隔絶されたと街場で暮らす人間が思ってしまっている場所においても、それを補い得る価値観の存在を指摘できるのかもしれません。もしくは、どうでも良いのかもしれません。