三田誠『レンタルマギカ 銀の騎士と魔法使い』角川スニーカー文庫。

レンタルマギカ  銀の騎士と魔法使い (角川スニーカー文庫)

シリーズがこの巻から第三部に突入。物語がスムーズに動き出す兆しを見せて非常に面白い。面白くなった要因としては、穂波、猫屋敷、アディリシアといった主要メンバーが物語の主軸からは消え去ったということもあるでしょう。やはり多かった登場人物が減ったというのは、何より物語とそして主人公が際立ちます。「レンタルマギカ」という魔法結社の特性上、様々な人物がいるというのは不可欠ではあるのですが、やはりラノベらしい濃いメンバーを揃えた本作品の場合、時として目移りすることは否めません。そういうわけで読者の視線は否応なく主人公の伊庭いつきに向けられるのでした。

第三部スタートの本作はとにかく主人公の成長が際立った作品でした。面白いのはこれはイラストレーターの力量なのでしょうが、結社に残った面々がイラストにおいても成長していること。口絵イラストなど何回も見てしまった・・・。成長を見せ付けるかのように勢ぞろいなイラスト。しかし、オルトくんは最初わからなかった。

興味深いのは伊庭がここにいたっても、魔法使いというカテゴライズをされていないこと。それは自己認識ではなく、他者認識において強烈で、読者としては妖精眼を持ち魔法結社の代表をしている人間が魔法使いではないというのはどうなんだとも思いますが、それは外的な要因。内的な要因では彼は魔法使いの論理から外れているという。その狭間にいる彼だからこそ、物語を生み出す、この成長物語を起動させているのだと思います。