有川浩『シアター!』(メディアワークス文庫)

シアター! (メディアワークス文庫)

「役者になるための免許や資格は存在しない、というところがミソである。実際の収入はほとんどバイトに頼っている状態でも、どんな端役しか回って来なくても、芝居を続けている限り役者と名乗れてしまう。うっかりすると実際に役がつかなくたって自分は役者だと言い張ることだけは可能なものだから、何となくずるずる辞められず、潰しが利かない状態に陥る人も珍しくないそうで―」(本書15、16ページ)


舞台演劇を素材とした小説。新しく立ち上がったレーベルでの出されたもので、従来のライトノベルの概念から離れていることは主人公がサラリーマンだったり、大卒だったりすることからも明らか。イラストも萌え系ではありません。そして、有川浩のお得意のラブロマンスは少し影を潜め、ほんの少しスパイスのように散りばめられている程度。役者がどれだけ大変か、演劇はどれだけ大変かというのは頭では分かっていましたが、こう小説で示されるとふむふむと頷きながら読んでしまいます。特に引用部分は色々と置換が可能で、自分に置き換えてみた瞬間に身をつままれる思いに襲われ、ばたっと一度本を閉じてしまいました。

なお全くのフィクションではなく、劇団「劇団子」を取材したとのこと。声優の沢城みゆきが演劇でも活動しているのは知りませんでした。