多崎礼『“本の姫”は謳う』4巻、C・NOVELSファンタジア

“本の姫”は謳う〈4〉 (C・NOVELSファンタジア)

何となく読み始めた多崎礼作品。ようやく読み終わりました。ファンタジー世界を舞台に、世界に散らばった文字(スペル)を集める若者と本からホログラムのように浮かび上がって存在している姫の物語。が主軸ですが、最初から何の説明もなく同世界の過去の物語と並行しながらストーリーは進みます。これが非常に面白い。とにかく最初は何の関係もない二つの物語が交互に語られて、主人公も違うし、時代も違うしで混乱するところもありますが、次第にわずかながらの繋がりを見せ始め、最後にはきちんと落ち着きます。もちろん使い古された手法ではあるのでしょうが、それでもきちんと物語を御する必要があり、それが出来るだけの書き手の力もあるということ。文明の崩壊という分水嶺をもって、それ以前とそれ以後との物語を並行させ描くというのは、そのどちらかだけでも大変であろうに・・・。

しかし、日本のファンタジーで物語の最初に地図が掲載されても必ず(なのか知りませんが)舞台となっているのは島か小さい大陸ですね。ロードスやらキエサルヒマやら。この本も同様に小さい大陸内でのみ物語は進みます。刻印の散らばり具合も何もかも。