石川雅之『もやしもん』8巻、講談社

もやしもん 8―TALES OF AGRICULTURE (イブニングKC)

1巻まるごと地ビールの話。当たり前なのかもしれませんが、単行本のことを考えて話数などを構成しているのでしょうから、すごいですよね。しかし、地ビールの巻といいつつもムトーの大活躍の巻でもあります。必然的に普段から影の薄い主人公のソウエモンらは脇へと追いやられました。でも、マツタケと喋ってた。

しかし、いつものことながらネームが多い・・・。ドラクエ9をクリアしてすぐに読もうとしたら、語る菌たちの濃密さにやられて、パタンと本を閉じてしまいました。それでもこの「もやしもん」という物語の凄さはその情報量の多さが全て倒れることなく、きっちりと読者に届き、且つ物語としても成立しているところにあると思います。そして何よりこの巻は先述のようにムトーの物語。

この巻の最初に登場したときは、何と言うかあえて描いているのか、今までそうだったのか分かりませんが、少し目が大きく、疲れたように見える容姿の彼女ですが、新キャラ登場による少しの挫折とそこから持ち前の行動力で動いていく様はどんどんと彼女自身を魅力的に見せていったように思えます。何よりすっかり忘れていましたがミス農大でした(です?)。

髪をアップにしているムトーさんの破壊力がもの凄いんで、引用しておきます。服も化粧もこの直前まで描かれていたダーク系とは違い白衣を着せたりしているのは意図的なんでしょうね。物語は彼女に焦点を当てつつ、理解の少ないマイナーな地ビールを通じて、成長させるという・・・使い古された手法ですが、それでも広げた風呂敷を遊び心満載で、そしてカタルシスを昇華して閉じていけるのはさすが。