渡航『あやかしがたり』ガガガ文庫、2009年

あやかしがたり (ガガガ文庫 わ 3-1)

また、新人による妖怪・怪異ものか・・・と思って買ったは良いが積ん読状態でしたが、読んでみたところ非常に面白い。

少しネタバレします。

山手藩という架空の藩で起きた後継者争いという軸が途中から見えてくるわけですが、そんなのをすっ飛ばして面白い作品でした。もちろんカワイイ化け猫とかそういう点も共感できた(というか羨ましい)のですが、一番面白かったのは田沼意次ならぬ田中意次が藩の家老として登場し藩内の経済を牛耳って専売制にし利益をあげているということ。これに反発した主人公の父親らのグループが反対運動を起こしていくわけですが、結果として主人公は田中派を助けることになります。これは読み終わって、ほほうと思ったわけですが、10年以上前に書かれたら作品なら絶対に田中が実は妖怪だった!藩内も私利私欲でかき回された!だから江戸帰りの主人公に切り捨てられて終わり、という流れだったと思います。田沼意次に対する評価自体の変遷とともに、こうやってラノベもかわっていくのですね。

次回作に期待。本当に期待。