西尾維新『ネコソギラジカル〈下〉青色サヴァンと戯言遣い』講談社文庫

ネコソギラジカル〈下〉青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

読みました。膨大な分量で次々と発表されていった戯言シリーズですが、終わってみるとあっけないもので、時系列的にはほんの数ヶ月のお話。最後に至るまで、相当数の登場人物が主に惨殺されながらも、最後は哀川潤が言い切ったように見事なハッピーエンドでした。

そう、哀川潤。最初のうちは物語に関わり合いのないところで動くキャラとして認識していましたが、最後のほうになるとあまりにもカッコ良すぎて彼女なしにはこの物語は成立しえなかったのではないかと思ってもいたりしました。しかし、あまりにも主人公然とした存在であるがゆえに、彼女に焦点を当ててはここまで面白い作品にはならなかったでしょう。戯言遣いとしてのいーちゃんが地味にではありますが、物語の中核に存在し続けていたことによって、逆説的に哀川さんの立場が際立っていったのではないかと思っています。家族、絆、仲間というフィクションでは描きつくされた感のあるものを、そして人類最強だとか人類最弱だとか十三階段だという少年漫画的なノリを戯言という立場で距離感をもって描けたことも、この作品がまとまっていったことに繋がっていると思います。

最初、西尾維新を読み始めたときは、このノリは合わないのではないかと思っていましたが、結局、色々と読んでいます。不思議なものです。