時雨沢恵一『キノの旅』1〜12巻、電撃文庫

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

キノの旅〈12〉

というわけで3月末から出勤の電車の中で延々と読んでいたぜ!アリソン・リリトレ・メグセロときて、原点回帰のような感じで、キノシリーズを読むことにしました。その昔、BSで放送されていたアニメは全部見ておりましたが、あの時は暇だったのでしょう・・・もう6年も前の話です。「えっ、キノって女の子なの?」と放送を見ていた僕は思ったものです。

キノの旅の見事さというのは、一つには必ず風刺的描写を織り交ぜている点でしょうか。連作短編集であり、キノのいる世界で、国というのは必ず四方を壁でぐるりと囲っているため、他者との境界というものが非常に際立っていると思います。そのため、様々な土地・場所・国での風習・文化の差異というものが非現実的と思えるほどのものであっても、そこにある種のスパイスとして我々読者にとって現実的な点をほんの少し混ぜ込むことで、フィクションとしてリアリティある世界観が成立しています。場所を移るだけで、がらりと様々な点の変容が見られても、際立つ境界性とある種のリアリティが非現実的な部分を覆っているということでしょうか。

そして時系列を崩して、複数の物語を同時並行で収録していく点もお見事。実は旅から旅という行動は、読者からみると、どんなにあちこちをうろついても一方通行的な雰囲気が感じられるものだと思います。が、この作品は大きく分けて三つの物語がある程度絡み合いながらも、進んでいくことで、物語としての膨らみがあり、飽きがきません。

さて、残るは『学園キノ』ですね・・・。それにしても黒星紅白の描くキノが巻を追うごとにカワイクなっております。