時雨沢恵一『アリソン』全4巻、『リリアとトレイズ』全6巻、電撃文庫

アリソン (電撃文庫)

リリアとトレイズ〈1〉そして二人は旅行に行った〈上〉 (電撃文庫)

作者の代表作『キノの旅』は個人的にはなぜか馴染めない作品でした。全部を読んだわけではないのですが、『星の王子様』に社会風刺を交えたような作品を読む・・・というのが、どうなのだろうと頭を抱えたのは事実です。が、こちらのシリーズはすんなり読めました。

とにかく男女の物語。『アリソン』は主人公のアリソン(女性)とヴィルの物語であり、『リリアとトレイズ』はそのままリリアとトレイズのお話。ちなみにリリアが女性です。キノのときもそうでしたが、この人の描く作品では、実はジェンダー的にはフラットな部分を目指そうとしているのではないだろうかと思うときがあります。キノはまさしく男装の女性という点で、男性性と女性性を隠しつつも強調するという手法であり、このアリソンシリーズ(という呼び名?)もまた、タイトルでは女性に重きを置かれているように、物語は女性を中心に巡っていきます。アリソンが軍人であることに対しヴィルが学生であったり、リリアが常に引っ張っていったりという様相は、2人という男女関係が見えやすい構図であるからこそなのだと思います。脇役なのに延々と引っ張り続けたカルロの存在なども同様なのでしょう。

そんなわけで、続きの『メグとセロン』を読み始めました。