津田雅美『ちょっと江戸まで』1巻、白泉社
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久しぶりの津田雅美。というか江戸時代を題材にするとは思ってもいなかった上に、江戸時代が2009年まで続いたらという設定は、思わず深く考え込んでしまうのでした。
ただ、非常に軽いノリで現在の江戸時代(ああ、矛盾した・・・)を描いているので、肩の力を抜いている分、こちらも楽しく読めたのは確かです。非常に興味深かったのは、作中の現在とリアル世界の現在をクロスさせて、説明をするということ。って分かりにくいですね。現在の東京ドーム周辺とその昔、江戸時代の水戸藩上屋敷の場所を重ね合わせて説明するなど、江戸時代が一つの点になり、それと現在という点を直線的に結んだ感じがします。作中では、それは直線的な概念ではなく、平面的に同化しているのでしょうが。これを短絡的としてしまうのは容易い。表象として浮かび上がっている江戸時代というものを短絡的に現在と融合させることは、本当にここ最近の行為ではないかな、と思いますが、どうなのでしょうか。
根拠もない感覚的な話をすると、60年代、70年代ぐらいまでってギリギリ、江戸時代は遡及性ある事象だったような気がするのですが、今はそれが表象としてアプローチ出来うる存在として認識されている気がします。これは決してフィクショナルな世界だけでなく、学術的な側面でも同様で、例えば奥野卓司『江戸文化とクールジャパン』でも、江戸文化と現在の萌え文化(でいいのかな?)を同様に語るわけですし、Eiko Ikegami. Avatars Are For Real: Virtual Communities and Public Spheres. Journal of Virtual Worlds Research, Vol 1, No 1, 2008なんかはセカンドライフ内の活動と江戸時代の俳諧の活動を結び付けています。これらをそんな直線的に結び付けてどうするんだ!と考えるのではなく、江戸時代というのは、そういうアプローチをされうる単一的な概念化されたものなのだという風に考えたほうが良いのかもしれません。
というのは、まあ、どうでも良いことなのでしょうけど。