北村薫『ニッポン硬貨の謎』東京創元社、2005年

ニッポン硬貨の謎

この1週間、通勤中に読んだ本を一気に書いてみよう。

北村薫作品を久しぶりに読みましたが、エラリー・クイーンが来日した際、事件を解決し、それを記した未発表原稿を北村薫が翻訳した設定で書いたパロディ作品です。クイーンマニアが読めば、ニヤっとできるのでしょうが、クイーン作品を読んだのは中学生の時です。もう忘れています。ただ、それでも細部に至るまで、濃密に作り上げられた作品であることは十分に理解でき、外国人が書いた日本の描写風景というのをわざと表出させ、脚注という形式でそれを指摘するという総体としての一つの作品であるということの完成度の高さが存在します。

個人的に楽しめたのは、若竹七海でお馴染みの「50円玉20枚の謎」との関連。若竹七海がバイトをしていた本屋にて、50円玉を20枚持ってきて、1000円札に両替をする客がいたが、それはなぜかという答えのない謎を推理作家が小説という形で回答を持ち寄った企画があったわけですが、それがこんなところで絡んでくるとは・・・・。

競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)

最初に本屋の該当するシーンが出てきたときは、二重のパロディなのかと理解していましたが、そのまま物語の中心軸へとなっていくとは思いませんでした。ただし、この謎はクイーンが乗り出して、解決するというわりには「日常の謎」すぎるというのが個人的な感想です。