有川浩『クジラの彼』角川書店

クジラの彼

『海の底』や『空の中』の後日譚も収められている短編集です。基本的にそれまでの作品が長編小説という性質上、及びエンターテイメント作品としては不可避であったためか、非日常的な状況に置かれた主人公たちが描かれていました。しかし、この作品はどれも日常的な彼らを垣間見ることができます。巨大化しかエビと闘ってた彼らも、戦闘機に乗って未確認物体と交信していた彼らも、地上にては意地っ張りだったり、我が侭だったりと様々な顔を見せるのだなと無駄に感心。

それを受けてか、全編恋愛作品であり、全編にて家庭やら家族やらが強調される作品群となっています。しかし、裏返してみれば、ハッピーエンドで終わるという手法を取り続けるために、同じような作品が並び続けるだけとも言えますが、後書きで作者が「ベタで何が悪い」というような文章を掲載している以上、まあ、こんなものでしょう。何といいますか、それ以上でもそれ以下でもありません。

そういえば、最初は『クジラの波』というタイトルだと思っていました。