小原愼司『パノラマデリュージョン』1巻、講談社

パノラマデリュージョン 1 (1)

久しぶりに小原作品がアフタヌーンで読める。ということで心が騒ぐのは、やはり『菫画報』という絶対的な作品が自分自身の中にあるからでしょう。

『菫画報』は、部活動という(地理的にも概念的にも)制限された空間の中で、繰り広げられる様相がただただ楽しかった、という作品でしょうか。しかも、小原愼司らしく、日常生活を単に描くのではなく、そこから空想世界へと何のためらいもなく浮揚してしまうことができたのが、さらなる魅力でした。短い回数であったからこそ、凝縮された面白さと独特の間が最後まで通用したのかもしれません。

さてさて、話は新作『パノラマ・デリュージョン』ですが、フォークで幽霊と戦う女子高生や飴をなめる小学生、さえない中間管理職のおっさんとキャラ立ちしたものは出てきますが、まだ話が序盤なのか、面白さというのは一歩引いて、ストーリー展開へより力を注いでいる気がします。死んだ姉が突然、登場してくるという1巻にして、黒幕登場なところはもう少しキャラを掘り下げたほうが良いのに、と思わないでもないですが、作者らしい間合いで進められていくという点は健在です。2巻に期待というところです。