浅井ラボ 『TOY JOY POP』 ホビージャパン

TOY  JOY  POP

こんなにも読むのに時間がかかる作品になろうとは思いもしませんでした。どうにも読み進めると澱のように心に沈んでいく感情があって、その何かを疲れている時には必死に拒否したくなりました。もちろん、それはライトノベルという文体に、読み手として上手く乗れない時でもあったわけですが、やはり中味が少しだけ読み始める前の予想より外れていたことによると思います。

ライトノベルということでもっとお気楽な話だと思っていました。しかし、中心人物たちのほとんどが大学生であるということが他作品とは違うわけですし、高校生たちも性的倒錯という意味での異常性でもって背伸びしているという点では、やはり少し毛色が違うものかもしれません。しかし、ここで気を抜いてしまうのが、彼らのファミレスでの会話。一見すると、いや、どう読んだところでひたすら空虚な内容と言葉が飛び交っているだけの場面というものは、僕にとっては単なる読み難さを助長するだけのものでした。

しかし、合間に挿入されていく流言・飛語からも分かるように、都市という空間でもって、その中で形成されるコミュニティでもって、彼らは成り立っている。当然のことです。しかし、間接ババアとか、売春グループとか、ミニコミ誌とか、大学の演劇サークルとか、全く相互に関わり合いのないコミュニティを背負った人々が、唯一重なり合っているのがファミレスという空間であり、そこで繰り広げられる雑多な会話なのでした。個人性と重複性と浮遊性が強く意識されるコミュニティを繋ぎとめているのが、読者の誰もが思い描くお気楽な「日常」であったわけです。

読み進めていくうちに、その曖昧さと空虚さと浮遊感が、僕自身へと強く突き刺さってくる気がしました。そういう意味では再読する気がしない作品ですが、ある意味では再読してしまうかもしれない作品でもあります。