あずまきよひこ『よつばと!』5巻メディアワークス

よつばと! 5 (5)

おまえよく一人目のおじさんに話し掛けられたなぁー
本書140頁

 1巻にて「無敵だ」と断言されたよつばですが、この巻にてもその存在感は圧倒的です。しかし、その無敵さを支えているのは、実はとーちゃん自身ではないでしょうか。よつばが綾瀬家のお母さんによじ登っても、ヤンダとの喧嘩がどれほど加速しようとも、懐中電灯を自分自身に向けてそのまま走り、ゴミ箱に突入しても、海でひっくり返っても、とーちゃんは全てにおいて傍観者としてい続けます。彼が注意したのは、「それ歌詞違うだろ!?違うね!」の部分のみ。どれにおいても恐らくはよつばと彼自身との目線が対等とは言わないまでも、限りなくフラットに近いか、もしくは同じ位相にて存在している感じがします。冒頭の引用は感想ですし、「つらいんだー」の部分にしても、大声で歌うな!という注意ではなく、歌詞が違うという端的な指摘でしかありません。しかし、やはり対等ではないのは、常によつばへと視線を向け、海へ行く時など(結局、一緒になって走ったにせよ)浮き輪の紐を握っていたりとその暖かみを感じさせるからでしょうか。

 あとはダンボーがカッコよかったりとか、風香ちゃんのTシャツが普通だったりとか、「み、みうらさん!?」とか。細かいところまで張り巡らされた読者が「日常」を想起させる部分が面白さとなって滲み出ていると思います。次の巻からはもう9月ですね。