米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』新潮社

米澤穂信はこのような作品が書けるのか！という驚きがまずありました。冷静に考えれば『インシテミル』といったゲーム性が高く、且つ悪意が描かれる作品だってあるわけなのですが、どうにも古典部シリーズとか○○限定〜シリーズなどの青春をくり貫いて描いている作品のイメージが強かったようです。

「バベルの会」という大学のサークルを中心的には据えているものの、それは物語の中心ではなく、サークルというほんの一掴みの繋がりの中で生まれてくる連作短編集でしょうか。描かれる短編のほとんどが大学を舞台にしているわけではなく、旧態依然とした上流階級生活やら金持ちの別荘といった物理的か心理的に閉じこもった世界になります。しかも探偵役が登場するような本格派ではなく、ゆがんだ価値観が率直に表出するというもの。

ううむ。毎回、この作者の作品は読むようにしていますが、今回も使い古された手法を駆使しているにも関わらず見事でした。ページをめくらせる力があります。