あずまきよひこ『あずまんが大王 一年生』小学館

あずまんが大王1年生 (少年サンデーコミックススペシャル)

大学生のころはちょうど、連載→単行本→アニメ化(いろいろ)→大ヒットとちょうど時を同じくしていたので、何というか感慨深いものがあります。何より貪るように読んでいたので、あの当時はセリフを暗記していたほどでした。

もちろん、今は忘却の彼方ですけど。

それにしても大きな変更点は2つ。一つは当時の雰囲気をある程度までは残しつつも、絵をある程度は描き直している点でしょう。90年代特有のオタク文化を背景にした頬の部分がカクっとした絵柄が、すっきりとした今の『よつばと!』の絵に一部なっています。昔の絵がこれほどガタガタだったとは・・・何であれほど何回も読めたのでしょうか。あの頃の僕らは行間を読み過ぎた、というか僕らの想像力とマンガリテラシーの無駄な高さによって、あずまんがを読むことは支えられていたのかもしれません。

あとネタもいくつか変わっています。セリフ部分などは比較的変更が多いような気がします。子猫をゆかり先生が拾ってきた話などは、突っ込みがオチだったのが、流すのがオチになっています。その余韻部分も描けるようになったということでしょうか。

そして何より補習編!これはもうあずまきよひこがどれだけ成長したか一目でわかるものになっています。以前のあずまんがでは固定化されていたカメラワークが、この補習編では縦横無尽に動き回ります。最初の大阪の「忘れててもへいきー」という4コマも、ほんのわずか大阪に寄ったりと、本当に見事。教室内での他愛無いトークでも、多角的に大阪・トモ・ヨミと焦点を当て、立体的な空間を描き出しています。あと背景もきちんと描かれるようになったのも大きいのでしょう。しかし、これだけ動いても、あずまんが特有のまったりとした緩やかな空気は変化していないのが素晴らしい。

個人的には大満足。何より個人的にはあずまんがで一番好きな、ゆかり先生が居酒屋で「教育とはー!」と語るネタが消えていなかったのが良かった。