秋田禎信『エンジェル・ハウリング』全10巻、富士見ファンタジア文庫

エンジェル・ハウリング〈1〉獅子序章‐from the aspect of MIZU (富士見ファンタジア文庫)

エンジェル・ハウリング〈10〉愛の言葉‐from the aspect of FURIU (富士見ファンタジア文庫)

オーフェーンシリーズでお馴染みの作者の別シリーズ。これも全巻を揃えており、途中までは読んでいたのですが、この連休でもう一度最初から読み直しました。

ミズーとフリウという2人の女性を主人公にしており、奇数巻がミズー、偶数巻がフリウを主人公として描かれています。ということであれば、物語も全然違うところからスタートするのかと思いきや、同じ話を別の角度から描き続けるという・・・読者としては巻がかわると同じ内容をもう一度巻戻され、提示されている感覚にあることは否めません。

いや、それにしてもオーフェンのときも同じことを思いましたが、ストーリーとしては、主人公たちにとってみれば自分自身のことや家族のことといった親密圏に所属するようなものが一気に世界的な事象の問題へとたどり着くという、一見するとセカイ系であるように形作っていますが、内実は世界のほんの端っこの切れ端が主人公らに関係しているといったものではないでしょうか。このシリーズのラスボス的存在である精霊アマワも、隙間に生じる存在のようですし。あとオーフェンと同様に、血族的な関係ではない家族という存在、人びとの繋がりという点を描き出そうとしているのは秀逸です。

でも、交互に出されてくるので、二歩進んで三歩下がる感じがあって、読み進めるのが大変でした。個人的にはフリウ編に出てくる精霊スィリーはいいキャラで、お気に入り。ちっこいやつが人生を語るというのはなかなかツボです。