小川一水『天涯の砦』ハヤカワ文庫

後書きに書かれていますが、細部にこだわったハードSF。宇宙ステーションで起きた事故の生存者が、空気のある箇所を渡り繋ぎながら、生還への道をたどっていくというお話。一期一会とはいうものの、生存者同士は見知らぬ者同士であり、それぞれに抱えている事情、文化や社会像などが錯綜しているわけですが、やはり事故というものがそれを一旦、フラット状態にして、物語を構築していくため、読者にも登場人物たちの様々な思惑が途中から吹き出ていても違和感なく受け止められます。

そういえば岩原裕二の『いばらの王』もこういうパニックを乗り切るストーリーでした。とふと思いついたけど、多分、たくさんあるのでしょう。しかし、やはりこういうものは精緻な設定がバックにないと彼らの危機感が伝わってこないことになるでしょうから、結構、難しいものかもしれません。