有栖川有栖『女王国の城』創元社、2007年

女王国の城 (創元クライム・クラブ)

久しぶりに刊行された学生アリスシリーズの第4弾。本当に懐かしい面々が登場してきて、それだけで楽しく読めました。

作品としては、山奥に居を構える宗教団体に閉じ込められた江神二郎を追って、いつもの推理小説研究会のメンバーが駆けつけるというもの。新興宗教という存在によって、村自体が閉鎖され、人為的にクローズドな状況になるという本格小説

それにしても懐かしい。アリスとかマリアとか織田とか望月とか。そして江神先輩。このシリーズの1作目を創元推理文庫で読んだときは、僕はまだ10代で、江神先輩はずっと年上の名探偵でした。ところが月日が流れるのはこんなにも早いというのに、作中ではそれほど時間が流れておらず、気がついたら江神先輩と同い年になっている自分がいます。そういう視点で読むと、単に浪人と留年を繰り返したダメな学生であり、リアルに会ったら単なるロン毛のうざいやつとしか思えません。

いえ、それでも名探偵なのです。というかミステリをキャラ小説として読んでますね。アリスとマリアはどうなるのでしょう。作品としては大著でありながらも、一気に読める展開でした。ミステリとしても新興宗教というイメージを大いに利用しながら、読者が不自然と受け取る展開にはならずに主人公たちが物理的にも精神的にもクローズドな状況に追いやられていくのは見事と言うほかありません。