森博嗣『探偵伯爵と僕』講談社文庫、2008年

探偵伯爵と僕―His name is Earl (講談社文庫)

たしか「ミステリーランドシリーズ」の一つとして出版された本だったな、と思い調べてみたら、その通りだったのですが(ここ参照)、文庫化される前に一度ノベルズ化を経ているという・・・商魂たくましいのか何といいますか。

というわけで、子供向けかと思いきや、大人までをも読者に想定したシリーズなので、これは書くほうも難しいがゆえに力量ある作者なのか、それともそのような枠組みなどは想定する必要性のないものなのか、何はともあれ予想をはるかに上回って面白い作品でした。小学生を主人公として、夏休みのほんの数日に起こった事件を描いた作品。森博嗣のほかの作品でもそうですが、非常に切れのある文章を繋げてくることや、また、ほんの短い説明でカヴァーするというのか、探偵伯爵も結局何が何やらという人物ですし、結局、彼のことで読者が分かったことは表層的な事実・事象でしかありません。つまり、小学生の主人公というフィルターのおかげで、かなりの部分を省略しても、登場人物たちが非常に生き生きと動いていますし、かなり無理はありますが、何より目線が対等なので一つの作品としても楽しめます。

それにしても解説はアンガールズの田中なのですが、これは必要だったのでしょうか。