相田裕『GUNSLINGER GIRL』10巻、アスキー・メディアワークス

GUNSLINGER GIRL 10 (10) (電撃コミックス)GUNSLINGER GIRL 10 (10) (電撃コミックス)
相田 裕

アスキー・メディアワークス 2008-10-27
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前巻のアンジェリカの死の衝撃からか、それともこの作品のどこを読んでも纏わりつく死と悲しみのイメージからか、表紙をみたときは、読むとまた悲しみに暮れてしまうのかもしれないと鬱々とした気分に少しだけなりました。しかし、この涙は単に悲嘆による涙ではなく、仕事でもそしてそれ以外においても強烈に死と隣り合わせで生きている彼女らが前に進むための涙だったのです。

闘うために義体という改造された体になり、条件付けとされる担当官への絶対的服従を操作されている彼女らは、ただその存在だけで、読者への罪悪感を増していると言えましたが、それを物語として増幅させていったのは、二期生の義体の少女の登場によるところが大きいでしょう。確かに一期生のトリエラ(表紙の少女)は義体としての生の限界を感じながらも、担当官とともに「生きて、死のう」と心に誓うわけですが、それでも彼女自身の脳裏に、そして勿論、読者の脳裏にもちらつく条件付けの存在が悲壮感を完全には拭い去ることが出来ない一因になっています。また、記憶が失われていく恐怖と戦うヘンリエッタも、最初の数巻では愛らしい所作を振舞っていた彼女ですら、この段階になると死への恐怖からは逃れられず、読者への悲しみもまた募るばかりになっています。その合間に挿入されてくるペトルーシュカの存在が、一期生ほど強い条件付けを受けておらず、また、それほど目前には死が迫っていない彼女の所作が、どうしても読者としては一期生と比較してしまいます。

それはそれとして初回版だかについてきたイタリア観光案内みたいなものは非常に良かった。簡単にいうと東海林さだお的なものなのでしょうが、作品に出てくる車やらファッションやらの説明の横にキャラたちがかわいく居るだけなので、作品内とは切り離して楽しめました。