古味直志『ダブルアーツ』について書いてみる。

以下、ネタバレします。

打ち切りにあってしまった『ダブルアーツ』の感想など、きちんとしたものを書いたことがないので、少しだけ書きなぐってみます。今までエルーかわいいぐらいしか書いていない気がする。あと疲れているときにどれだけ文章を書けるのか、というのも見ものです。原稿書けよ。

1:概要
最早、発想の勝利としか言えないレヴェルなのかもしれませんが、「手をつなぐ」というこの単純な行為をここまで正当化してストーリーに落としてくる作品は初めてです。奇病ともいえる人間が薄れ、消えてしまう「トロイ」という病気が蔓延した世界のお話。主人公のエルレイン・フィガレット(エルー)はそのトロイを治療するシスターという職業なわけですが、

シスターは決してトロイを撲滅できるのではなく、また罹患者を完治しているわけでもありません。トロイへの耐性が強いゆえに、患者の中にあるトロイの毒を自分の中に取り込むことによって、一時的に病気の進行を抑えているだけになります。彼女自身の言葉にあるように、結局はシスター自身も病気によって亡くなってしまう運命にあります。そんな中、エルーが出会ったのがキリ・ルチル。

トロイの発作に襲われたエルーをキリが触ったことで発作がおさまったわけです。つまり彼はトロイに触っても罹患しないだけでなく、相手の発作自体をも止める能力の持ち主。彼の存在はシスター協会にとって、いや人類にとって重要なわけですが、逆にシスター協会に敵対する組織ガゼルにも付けねらわれることになります。

2:温もりということ
「手をつなぐ」ことからクローズアップされているのが、「温もり」というキーワードでしょう。エルー自身が以下で述べているように、トロイに感染しているということはこの世界では非常に大きな問題であるといえます。

罹患したことによって、今まで周囲に当然として存在していたものとの境界線が引かれてしまう。さらにそれは周囲からの一方的な拒絶だけではなく、ここでのエルーからわかるように患者自身による周囲への拒絶も含まれていることになります。このような世界で治療のために彼女らシスターが、いつかは死んでしまうことを理解しながらも活動し続けることの辛さがそこには存在します。それが何より表れたのが、第6話。

ガゼルからの護衛の依頼をしに、各地に点在するシスターの隠れ宿へ行った際、そこにいるシスターとの握手の一コマになります。彼女らの活動は引かれている境界線上をひたすら歩き続けること。第11話では、彼女らが常に制服でいることについて「この制服は警告なんです。「自分はトロイに感染してるから気をつけて」っていう周りへのメッセージなんですよ」と述べているように、病気に罹患しているという認識レヴェルでの拒絶だけでなく、身体レヴェルから拒絶的行為が常時発せられていることになります。そして、そこに身を置き続けることが何より彼女らから温もりを奪い去っていたのかもしれません。


眠いのでここまで。続きはまた今度書きます。

続きました。「2:温もりということ」の途中から話し始めるという荒業!

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