冲方丁『ばいばい、アース』2〜4巻、角川文庫

ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵 (角川文庫 (う20-2))

ばいばい、アース 3 (3) (角川文庫 う 20-3)

ばいばい、アース 4 (4) (角川文庫 う 20-4)

仕事は思うように進まないというのに、電車の中での読書は進むという・・・。1巻を試しに読んだら、そのまま加速度がついて一気にウブカタを読みました。

とにかく若い。勢いがそのままに出てきている感じで、単語に対し、英語やらドイツ語やらを散りばめたルビを振ってきて、最初は大層読みにくかったのですが、そんなことは瑣末だと思えるほどの物語の勢いに飲み込まれていきました。基本的にはファンタジーで前提条件的にSFですが、そのようなことはどうでもいい。地球が滅びた後の世界(恐らくは月面)を描いている中、人類滅亡後に新しく創世された世界を舞台にした作品ですが、特に問いかけているのは、その世界の構造。そして主人公自身。これだけを提示すれば、単純なセカイ系とも言える要素ですが、重厚な(そしてある種、人工的な、ラノベ的な?)世界観がそこに埋没させずにいます。狂ったように、世界に相容れない(それは外面も内面も)自らの由縁を狂ったように問い続ける主人公(ベル)と世界にはまるピースであってもおかしくないというのにやはり道理を問い続けるアドニスの2人が非常に印象的。最後に神を斬ってしまい世界の未来を変えるという読者としては予測可能な結末であり、また別の世界(月面の別の国)へと旅立ち、問いを続ける主人公というこれまた王道な終わり方であっても、非常に満足でした。

この著者からは『マルドゥック・ヴェロシティ』以来遠ざかっていたのですが、久しぶりに近年の著作に手を出してみようかなと思いました。