成田良悟『バッカーノ!2002 A side』『バッカーノ!2002 B side』電撃文庫

バッカーノ!2002 A side (1) (電撃文庫 な 9-24)

バッカーノ!2002 B side (2) (電撃文庫 な 9-25)

太平洋を両側から(日本とアメリカから)航海する2隻の船が物語りの舞台になります。孤立した嵐の中の孤島的な状況下に追いやられますが、成田作品は推理などもっての他な感じで、虐殺が繰り広げられます。作品としては相変わらずの疾走感と場面転換がひたすら繰り返され、読者としての酔い加減は伊達なものではありません。

それにしても2002年ですか。つい先日ではないか。このようなファンタジー作品が現代社会を舞台にするとどうしてもフィクションとしてのリアリティが薄まっていく感触が僕にはあるのですが、バッカーノ作品だけは別です(換言すれば、それ以外だと成田作品でも受け止めにくい)。この疾走感とそれに伴う鮮やかな場面転換、そしてストーリーが集約していくラストは見事というほかなく、読者が今まさに存在している現代・現在という時間からの近過ぎる距離感を全て葬り去ってくれている気がします。

それにしてもフィーロは幸せそうだなあ。