くるり『ワルツを踊れ Tanz Walzer』

ワルツを踊れ Tanz Walzer

クラシックとの融合だとか、ウィーンでレコーディングをしたとか、様々な情報が音楽を得る前に聞き手に飛び込んでくるのは、ある意味で不幸だよな、とか思います。誰が不幸かというのもケースバイケースですから、明確な指摘も難しいのでしょうが。

しかし、ストリングスをバックに配して音楽を奏でるというのは、日本のポップミュージシャンやロックミュージシャンの数多くがやってきたことなので、その点においては特に目新しさを感じることはありませんでした。逆説的には「スラヴ SLAV」とかを聞くと、ウィーンレコーディングによってオリエンタリズムが発動していないか?とも思います。

が、それは受け手としての僕自身のオリエンタリズムの認識であって、内実を解体してみれば、実にくるりらしい、いや岸田らしい作品群が並んでいます。それはメロディラインにしろ、歌詞にしろ。そういう点ではファンとしての安心感は得られますが、それでも不安を拭えないのは、根本的なくるりというアイデンティティを維持しておきながらも、なぜ常に通過点のような作品を作り続けるのかという疑問が消えないからでしょう。

もちろん到達点と思える作品を作ったところで、何かが終わるわけではありませんが。