佐原ミズ『マイガール』1巻、『バス走る。』新潮社、2007年。

マイガール 1 (1)

バス走る。

いつの間に、これほど涙もろくなったのだろうか、と『マイガール』を読むたびに思います。何度も読んでいるうちに、ページをめくる前から次にはどんなコマがきて、どのような話になるのかを想像できてしまい、それで泣き出したりもしました。

やっぱり最近は疲れているのかな。

それをほんの少しだけでも癒してくれるという点では非常に貴重な作品です。主人公の男性が昔、付き合っていた女性の死、そして彼女との間に知らないうちに残されていた娘という2点から話はスタートします。極めてフィクションらしい設定の中で、主人公と女の子は絶対的な死の存在を受け入れようともがきながら生活を始めるわけです。

期待値が高まった上で読んだのが初期短編を収めた『バス走る。』でした。こちらのほうは正直なところあまりにも普通すぎて、いや、透明感がありすぎて、読んでいる自分自身の中を素通りしてしまった作品だといえます。何が違うのか、ということを明確にするのは非常に難しいのですが、やはり『マイガール』がヒロインの死からスタートしている時点で、ある意味では単純に救われるということが難しい点が指摘できるでしょうか。『バス走る。』では、主人公にとってみれば空虚な日常世界をほんの少し視点を変化させてみせるヒロインの存在があり、主人公―ヒロインという二項的な構造はどの短編でも崩れていません。

それが死でもって、当初から崩れている。残された主人公と娘が、死によってお互いに初めて出会い、生活を重ねていく。親子だというのに遠い距離感、そしてさらに遠いヒロインとの距離感。それを少しずつ歩み寄りながら、埋めたり、乗り越えようとしている様子はもどかしさと悲しみと、そして優しさで読み手をいっぱいにしてくれます。