冲方丁 『蒼穹のファフナー』 メディアワークス

蒼穹のファフナー

一時期、毎週食い入るように見ていたアニメのノベライズ。基本的に世界観が出来上がっているものを、別の角度からもう一度触れるというのは忌避する傾向にあるのですが(このメディアミックスの時代になんてことを!とか言わないで)、これは最初から高い期待値で読めました。何せ作者が冲方丁だから。

とはいえ、1巻で完結していることからも分かるように、全体的なボリューム不足は否めません。しかし、それを補って余りある、情景描写・人物描写のオンパレード。はい、正直に書きます。蔵前さんのことは、すっぽりと記憶から抜け落ちていました。始まって数話で亡くなった人のことをこうまで忘れてしまえるのか、と自分自身のことながら薄ら寒くなります。

有無を言わさず戦争に駆り出される少年・少女たちが、それまで作り上げてきた様々な人間関係・感情・夢・想い。それら全てが為す術もなく彼らの手から崩れ落ちていく様をただただ描いています。アニメ版のように戦争状態の中から、繋がりを見出し、最終決戦へと収束していくわけではありません。そこにカタルシスは存在せず、この小説で戦争は終わらない。読者に放り投げられた、このもやもやはどうすれば良いのだろうか。

ちなみに遠見真矢が個人的にお気に入りなのですが、小説版では設定がかわって、ファフナーには乗っていません・・・。