羽海野チカ 『ハチミツとクローバー』 10巻 集英社

ハチミツとクローバー 10 (10)

ネットを見渡していると手放しで絶賛が多いです。というよりも、そればかり。個人的にはラストへ向けて、テンションが一気に下がっていった作品でした。

何だろう。良くも悪くも、この作品は主人公の竹本くんに依存する部分が思っていた以上にあったのではないかと思います。彼が北海道までの青春自分探しから帰ってきて以降、見事に面白みが半減していった感じ。結局のところ、彼が優柔不断で、頼りなくて、体を壊してしまって、自分にも正直になれなくて、自信がなくて・・・という人間であったからこそ、登場人物たちはあやふやな関係を築き、悩み、互いにぶつかり合えたのかもしれません。それは一つの大学生という概念でくくることができる不思議な世界で、そこにあったからこそ、物語に共感できたのでしょう。

しかし、彼は北海道から帰ってきて以降、自らの足で立つことができるようになりました。そうなった彼を見てしまったときに、山田さんは泣いてばっかりだし(最初は鉄人だったのに)、真山は全然変わっていないし、森田さんは相変わらず学生だし、はぐちゃんは結局、視線に変化はないし・・・と温度差が見えてしまった気がします。その温度差を感じてしまった以上、森田さんの過去話も特に感慨なく受け止めてしまったし、ラストへも普通の流れで読んでしまいました。やっぱり帰るところは竹本くんですね。彼は大人になったなあ。

もちろん、それほどつまらない作品かというと、そうではなくて、一時期の個人的な盛り上がりはそれなりにあったし、普遍的な問題を硬軟交えながら取り上げた手法にも感嘆しています。と最後にフォローしてみます。

とりあえずリカさんはどうなんだろうか。真山・・・。