恩田陸 『ロミオとロミオは永遠に』 上下巻 ハヤカワ文庫

ロミオとロミオは永遠に〈上〉

ネバーランド』の時も同様の感想を抱きましたが、恩田陸は学校などの小さい共同体内での人間描写が秀逸だと思います。それはこの『ロミオとロミオは永遠に』もまた同じ。人を食ったような題名ですが、中味も一見するとかっ飛んでいるかのような印象を抱きます。

はるか未来に荒廃した地球を捨てて人類は別の惑星に脱出し、日本人のみが残ってその処理と回復を行なうという設定。管理統制された世界が構築され、その中でエリート養成のための「大東京学園」に主人公たちが入学することから話がはじまります。特に目を引くのが、20世紀のサブカルチャー(とされるもの)が政府からは、ひたすら迫害と禁止を受けているということ。もちろんアンダーグラウンドな世界で、それらは生き続けるわけですが、随所に散りばめられた20世紀のコンテンツ文化がマニア心をくすぐる設定になっています。もちろん作者によっての制約があるために、70年代から2000年代が中心とはなってしまいますが・・・。

しかし、そのような表層の楽しみだけではなく、やはり今の僕からは「異常」とも見える学園の中でも、そのベースとなっているのはやはり人間関係であり、それらをきちんと描きながらアクションシーンなどへの広がりを持たせている作品だと思います。その点は素晴らしい。どれほど異常であっても、学園物の基本的な骨格は、ぶれないということでしょうか。