渡辺まさき 『月の娘』 1巻 HJ文庫

月の娘 1

冒頭に「休み」って書いてるのに、どんどん日記を書いていく。久しぶりの渡辺まさきの小説です。「夕なぎの街」シリーズが大好きで、首を長くして待っていたのですが、プロフィールを読むと会社員をやっているようですね。サラリーがあるとは羨ましい。

それはさて置き。最初から「1巻」とクレジットされているように、話が途中で終わっています。異世界(並行世界?)からの人間との交流を描いたファンタジー小説と書くと正統派のようですが、基本的には僕らが認識しうる「日常」のみを抽出して提示した作品であるかと思います。実は結構、拍子抜け。話が何も解決していないということが一番、大きいのでしょうか。ただ救うべくは、前のシリーズでも見せてくれたその日常性がこちらでも随所でみられる点です。前回は単なる雰囲気作りというだけに留まらず、異世界だけど、ファンタジーだけども、どこか読者が「懐かしい」とさえ感じる「日常」をほいっと散りばめてくれた気がします。今回も同様で、主人公たちが駆け巡っている海が見える場所や山や林やら小道やら学校やら農協だかの直売店だとか、作者の経験に基づくものなのでしょう全てがリアリティをもって読者の前にせり出してきます。さらには、それを薄めない程度の魔術だとか、使い魔だとかのファンタジーが入ってくることもポイントでしょうか。過度に成りすぎず、しかし、お話のテンションは下げない。

惜しむらくは、せめて、もう少しボリュームが欲しかったところです。

ちなみに、この作品の口絵イラストを後輩に見せて、「エロいねえ」(そんなにエロくないヨ)とか言ってたら、先輩に横から一言「セクハラ」って言われました・・・。僕はダメドクターだけど(笑)、作品自体はエロくないヨ。