葉山透 『ニライカナイをさがして』 富士見ミステリー文庫

ニライカナイをさがして

 何がミステリーなのか分かりませんが、典型的なボーイ・ミーツ・ガール小説。もう何も言うことはありません。思春期に読んでたら、気が狂いそうになりますぜ。

 ありえない設定をありえない主人公たちがありえない感じでやっていくというのは、この手の小説の王道なわけですが、それを相殺するかたちで逆説的にリアリティを持たせているのが、実は「ニライカナイ」であり、彼らの逃避行先である「沖縄」ではないでしょうか。さらに言えば、概念としての「沖縄」でしょうか。一つには周縁的世界であり、あまりにも主人公らが生活する(そして作者が暮らす)「東京」とはかけ離れているということ。それは距離的・空間的な話でもあるでしょうが、やはり認識レベルでの話だと思います。沖縄の人が読んでも、僕と同様の感想など抱くはずもないし、日常世界の中でどたばた喜劇という非日常が繰り広げられているとしか受け止められないでしょう。

 これが東京都内で行われていたら、全くもって血なまぐさい話でしかない。と思ってしまう自分自身が実は一番視線が画一化されているので、嫌なのですが、思ってしまったことは致し方ない。同じく沖縄を描いた池上永一風車祭』とかに比べると、やはり周縁性という濃淡が出てしまっている作品です。そこが少し残念。でも、アイドルとの逃避行は良い。