ゆうきまさみ 『鉄腕バーディー』 12巻 小学館

鉄腕バーディー 12 (12)

 11巻の感想を書かなかったら、いつの間にかに12巻が発売されていたという罠。罠ではないけど。というわけで、物語がこう着状態から抜け出したところで、非常にスムーズなかたちで過去編へと話の移行がなされます。今まで、つとむくんの日常生活への視線過多でありながらも、そのことを感じさせないテンポの良さ(逆説的には悪いテンポだから良いのであるが)によって成り立っていた感がありますが、つとむとバーディーという二重生活である以上、双方向性が保たれて然るべきでありました。しかし、非日常を読者にとっての日常性で覆い隠すという手法によって、ほんの僅かな伏線等を垣間見せながらもバーディーの過去へ目を向けていないことよりも、目下の急務(に思える)ことのほうが重要に思えていたから不思議です。

 それにしても過去編は本当ににSFしてますね!なぜこんなにも古典的SFの様相がノスタルジーを喚起させるのかという疑問が出てきますが、やはりあまりにも不自然であることが実は人間にとっては心地良くなってしまっているのではないでしょうか。バーディーの世界で描かれている人々(といって良いのかな?)は、アルター人(要は人間)を差別化し、迫害しながらも、彼ら自身も人間型に変化(進化)した結果であるということが実は大いなる矛盾だと思います。しかし、その不自然さは眼前に登場することなく、奇怪でありながらも我々が奇怪だと感じることのないままに、漂う人間性に酔いしれることが可能になっている。大体においてどうすれば昆虫型も、哺乳類型も、同じように二足歩行が可能になるのだろうか。

 そんな戯言はともかく、まだまだ次巻へと過去編は続きます。