2005年9月

「愛しても、愛しても、私自身はこの世界から愛されていないような、そんな気が心のどこかでいつもしていた。受けいれても、受けいれても、私自身は受けいれられていない気がしていた。けれどもそれは私が父の娘であるせいではなく、ヤスの孫であるせいでもなく、ましてやサトミさんの子孫であるせいのわけでもなく、自分自身のせいですらなく、なべて生きるというのは元来、そういうことなのかもしれない、と。」
森絵都『いつかパラソルの下で』角川書店214頁