言葉
「だけどさ、雑音だって、おまえを作っているんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。おまえにはノイズにしか聞えないだろうけど、このノイズが聞えるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思…
「どこへもいけなかった」 ぽつりとナナコが言った。 「だけどあたしたち」葵は言った。「どこへいこうとしてたんだろう」 角田光代『対岸の彼女』文藝春秋223p これが1ヶ月トップにありました。
「愛しても、愛しても、私自身はこの世界から愛されていないような、そんな気が心のどこかでいつもしていた。受けいれても、受けいれても、私自身は受けいれられていない気がしていた。けれどもそれは私が父の娘であるせいではなく、ヤスの孫であるせいでも…
「他人の事情や本音そのものを、本当にわかることなんてあり得ないんですから。だから僕は、自分の理解の及ばなかったりわからなかったりする大きな隙間を、自分なりに埋めようとする。それが僕の場合、妄想という名の怪物なんですよ。いったん暴れ出せば、…