水色の研究

やあ、ワトソン君、元気にしていたかい?なんだい、えらい他人行儀じゃないか。まあ、座りたまえ。2丁目の道路工事を避けて、馬車で来たんだね。―――びっくりすることないさ、初歩的なことだよ。君の靴とそれに付いている泥を見れば分かる。いつもと違う泥だ。2丁目の泥はもっと黄褐色なんだよ。それにその泥の付き方は馬車でないと無理だ。僕は今度、ロンドンの地質について論文を書こうかと思っているぐらいだからね。それよりも―――どうしたんだい?ん、これか、先ほど拳銃で壁にVって文字を撃ち込んだんだ。ヴィクトリアのVだ。ハドソンさんは怒っていたけどね。僕はやらなければならなかったんだ。―――ああ、君までそういうことを言うのか。僕はコカインなんてやっていない!ここにある注射器で栄養剤を打っているだけだっ!以前、阿片巣窟に潜り込んだ時だって、阿片を吸っているように見せかけて、コカコーラの粉を舐めていたんだよ。僕はそこまで馬鹿ではない。―――症状?部屋で拳銃をぶっ放すのが、症状なのか?ちゃんちゃら可笑しい。君は結婚して、ここを出て行ってから俗世に毒されたね。もういい。本題に移ろう。

この葉書が問題なのか・・・文章自体は何の変哲もない残暑見舞いだ。―――ははあ、この男が行方不明だから探してくれとうどんの男から頼まれた・・・なるほど。これは興味深い事件だね。山に行くと言った男が残暑見舞いを出す。そこに何の意味があるというのか。まずは調べてみなければならないね。さあ、ワトソン君、久しぶりに行こうか。ハドソン夫人は今、買い物中だから、君が馬車を呼んでくれたまえ。